無職日記 3日目
今日は昼前に起きた。
昨日、想定外に夜通し遊びほうけて、友人の事務所で目を覚ました。性的な場所ではない。
そこらに古い本が並んでいて、ぼやけた緑の壁には、古くて小さな額縁や淡いクリーム色の麦わら帽子が掛かっている。
昨夜の缶ビールを片付けながら、昼に動いていないと人はこうしてバランスをとってしまうんだなと思った。
友人と一緒に事務所を出て、美味しい煮干しのラーメンを食べた。
自宅へ帰り、いつも読んでいるコラムを読み終わり、昼過ぎのちょうどいい暑くなさをベッドで感じていると、ああ出かけたくないと心底思う。
そういうときに限って出かける必要があったりして、人生うまくいかないものだと無職を噛みしめる。というか味わう。小さくなった無職キャンディを舌の上でコロコロ転がす。
今日の午後は、友人に会う。
3,4歳ほど年上で、いつでも口説いてくるくせに、ずっと友人でいてくれる稀有な人だ。多分さみしいんだと思う。だから信用している。
私を通り越して、南国を見ていそうな人だ。
無職になった私に合わせて、15時半から飲もうと約束したものの、先述の通りだらけてしまった私は、16時でもよいですかと連絡をしてからソリティアのアプリを起動した。
本当は履歴書を、手書きのとパソコンのと、二つ用意しないといけない。それに、今週末の用事に向けた、準備をしないといけない。年金事務所に行って、住所変更の手続きもしないといけない。
いけないいけないが溜まると人はソリティアをするのだ。
そうしているうちに南国さんから「いいよ!」と連絡が来たので、安心して、まだ少しのんびりする。
そんなこと言われるくらいならこっちから言う。
無職日記 2日目
今日はメイクを落とさずに寝てしまっていた。だめだなーと思いながら、まだ落としてないまま。
9時過ぎに起きて、ああこれは、働いていたら遅刻確定の時間だぞと思いながら、でももう働いてないからな、と思うこの一連の感情の流れ。
いつまで感じるんだろうと思いながら、昨夜酔っぱらいながら買った白菜の漬物をもそもそと食べた。
そうこうしているうちに、明日遊ぶ予定の人からメッセが来た。
「いつまでそんな生活?」といきなり来たので、驚いて読み返すと、昨夜会社を辞めたことを伝えていたのだった。
これにはどう返すべきかと、防弾チョッキの襟を正しながらひとまず「お説教モードですか?」と返したところ、慌てた様子で、確かにそう見えるけどそういうつもりじゃなかったというお詫びの連絡が来た。
単に、いつまで休暇を取るのか、聞きたかった様子。
そういえばこの人はいい人だったと思い出しながら、防弾チョッキの錆びたボタンを眺めた。
やりとりをしていると、お互いの名字のルーツや、私が年末に行った場所の写真や、酔っぱらっているときの人の状態に関してあれこれ話した。
私は、酔ったときに本性が現れる、みたいな言説にあんまり納得してない。
酔ってないときも、酔ってるときも、その人の本当であって、なにも酔ったときだけ本当ポイント高く設定する必要はないと思う。
みたいな話をしたら、「酔うと、本当の酔った自分が出ると思うよ」と言われた。
なんだこれはと思って「そりゃそうだ」と返したら、相手は「何も言ってないに等しい」と自分で言っていた。
こういうところが、この人と話してて楽なところだなと改めて思う。
顔は好みじゃない。