金麦を飲む

無職になったので、日記をつけようと思います。

無職日記 11日目

昨夜うたた寝して、23時頃に起きてから10時前まで起きていたら、そこから2時間ほど眠っていた。

昼に起きると、前職の後輩から、自分の送別会に関するお誘いが来ていた。

辞める前に自分から「辞めたあと私の送別会やりますよ」と言っていたので、自分主催みたいなもんだけど、まあ取りまとめてくれたのは後輩たちなので、とても感謝している。

と共に、「今、切実にほしいものってありますか?」と聞かれる。

これはどう考えても、プレゼント的なことなのだろうけど、どこまでほしがっていいやら悩んでしまった。「切実に」なんて言われたら、ちょっと期待しそうになってしまう。考えれば考えるほど「掃除機」「自転車」「夏の装い」「仕事」「愛」とかどんどんヤバい方向に行ったので、これはいかんと最近の自分の行動を振り返ってみる。すると、ちょうどカルディで水出しコーヒーポットを買おうかどうか迷った日があったことを思い出した。

調べてみると1,000円前後だったので、数日前の自分に、迷ってないで買いなさいよと思いながら、後輩に伝えるのもちょうどよさそうなので、買おうと思っているところだと伝えた。

かわいいかわいい後輩(年上だけどかわいらしい、1児のママ)からは「いいですね〜!それを買うのは、ちょっと待っててくださいっ(キラキラ)(ヒーローみたいな絵文字)」と返信が来て、最高に癒やされた。

 

前職の人たちはほとんどが「いいひと」だった。

優秀で気持ちのいい人もいた。優秀で、ねちょっとした人も、優秀でも無能でもない人も、浅はかだけどまあ適当に流しておけるような感じの人も、まあいたけど、そこそこよい環境ではあった。私のような雑魚でも、意見の言いやすい雰囲気があった。

 

チームの中でたったひとり、自分にとってどうしてもダメな人がいた。一応その人は私の先輩だった。

初めて会った時からうっすらと、ダメな気がしていたのだったが、長く一緒に働いていて最も信用していた人が辞めるという時、いよいよ「私はここにいられない」と感じた。

 

自分が辞める直前、お世話になった方と二人で飲んだ。正確に言うと、一人が遅れていたので、先に二人で飲んでいた。

辞めることに決めた本当のきっかけは?と聞くので、そこまで直接業務に関わるような人じゃなかったのと、二人っきりだしいいか、と思って、少しだけ話した。

なんで、無害そうじゃん、とその人は言った。実際には、全然無害じゃない。というかもはや存在がダメに近くなってしまっていて、私自身、誰かのことをそんなふうに思っている自分の状態は嫌だし、何よりチームにとってよくないと思って、辞めることを決めた。

なんて言ったらいいんだろう。視線のずらし方とかすれ違う時の妙な空気とかそういう「感じ」の部分と、毎回質問とズレたことを答えるとか、いわゆる報連相ができないとかの単純な「仕事できなさ」の部分と。最も嫌だったのは、口もとを触って何かを指でピンと飛ばすような癖(会議中もやるのが地獄)だったけれど、まあ挙げても仕方がない。

 

「無害そうじゃん」と言ってきた人には、上記のような具体的なことは言わなかった。

もし私がそんなことを言ってしまって、話した相手が今後その人のことをそういう目で見てしまったら、私のせいで不快な思いをする人間が二人も増えることになる、かもしれない。それは嫌だった。(二人というのは、私にとってダメな人と、私がその話をした人。)

まあ名前言ってる時点でダメだろと言われたらそれまでで、それは謝るけれど(ごめんなさい)、名前出しても「なんで?」となったのなら、それ以上言う必要はない。私にはダメならなおさら、私以外の人たちには好かれていてほしい。

 

そんなふうに思って、「なんて言ったらいいんでしょう」「いろいろですね」と、感覚的な女性のふりをして逃げてしまった。

こういうことをするたびに世の中に「感覚的な女性」がいる、と信じる人を増やしてしまうような気がして、胸が罪悪感でピリついた。

本当は気持ちのすべてを言語化できる、けどそれが伝えたい言葉かどうかは別だ、と思って、少し悲しくなった。

 

5月のよく晴れた金曜日。の夕方。

会社近くのベンチに座りながら、上司に、会社を辞めたいと告げた。

 

週末のせいか、月末近くだったせいか、そのいずれも違うのか、社内の会議室がすべて埋まっていて、どうしましょう、お話は来週でも大丈夫なのですが、と伝えると、まさかの「じゃあ外で話そう」「ちょうどコンビニでアイスコーヒー買いたいし」と言われる。

マスコット系かわいいおじさんの上司は、会社を出た段階で、私が話そうとしている内容にすでに気がついていた。訥々と、速やかに、そしてできるだけ穏やかに、話を進めてくれた。

こんな人のもとを去ろうとしているなんて、自分は間違っているんじゃないかと少しだけ思った。

自分の中で業務への面白がり度は上がっていたし、辞めてからの仕事もまだ決まっていない段階で、絶対に今じゃなかった。

絶対に今じゃないけど、絶対に今しかないとも思った。

 

辞めてから11日目。ここまで書いて、この日記のタイトルを見返した。そんなに経っていないけど、後悔はまったくしていない。

今日は夜風が少し涼しくて、とても助かる。